今頃振り返るんだけど、今年の寺っ子スクールのテーマは「ありがたいこのいのち」だった。
「ありがたい」とは「あることが難しい」という意味なんだけど、それがなぜ感謝の喜びに繋がるんだろうね。
「ありがとう」の語源は、仏教の「盲亀浮木の譬え」にあるのだそう。
僕はその譬えを使って、「ありがたい」ということを子供達に精一杯語った。
その内容はこういうものだ。
ある時お釈迦様が弟子の阿難さんにおっしゃったそうだ。
「あなたはこの世に生まれたことをどう思っているのかな?」
阿難さんは答えた。
「とても喜んでおります」
「そうか。もしそれを喜べない人がいるとするならば、それがどれほど難しいことなのかをわかっていないからなのだよ」
そして一つの例え話を続けられた。
「大きく大きく広がる海を思い浮かべるがいい。
その海の底には一匹の目の見えない亀がいて、100年に1度だけ海面に顔を出すのという。
また、広い広い海のどこかでは、一本の丸太が波に揺られて漂っている。
その丸太の真ん中にはちょうど亀の頭が入って休むことのできるくらいの小さな穴が空いている。
そんな100年に1度浮かび上がった目の見えない亀が、そのどこを漂っているのかわからない丸太の穴の中にスッポリと頭が入るなんてことが、あると思うか?」
「そんなことあるはずがありません」
「それでは絶対ないと言い切れるか?」
「いえ、絶対ないかと言われましたらば、もしかしたらたまたまありえないような不思議なことが重なった時にあるのかもしれませんが」
「それが私たちの命なのだよ。
私たちがこの世に生まれてくるということは、100年に1度だけ目の見えない亀が海面に浮かび上がってきた時に、大海を漂っている丸太に空いているちょうどいい大きさの穴にスポッと頭が入ることの如く、有り難いことなのだよ。」
そんな「盲亀浮木の譬え」を話し、どれだけあなたの生まれてきたことが奇跡中の奇跡で有り難いことであるかを伝えたつもりだったんだけど、残念ながら子供達の反応はイマイチ。
(うーん、大人ならここでかなりいい感じのリアクションがあるのに~と僕は焦る)
「よし、しゃーないな~。こうじゅん先生のミラクルで奇跡的な、有りえないでしょ~っていうことが起こった体験談を特別にしちゃいま~す。」
と、路線変更とともに口調まで変更しちゃう僕。
「先生の奥さんはね、1974年11月12日生まれなんよ~。
それでね、先生には3歳年下の妹がいるんだけどね。
その妹の結婚した旦那さんの誕生日が~、なんと1974年11月12日なの。
兄妹で同じ生年月日の人と結婚してるんよ。
すごくない?
それを知った時、みんなで「えー!すご~い!ありえない!」って心底驚いて爆笑したもんだよ。
ありえなくない?
だって生まれた年も、月も、日も全く一緒なんだよ。
ほんとこれってミラクルだって震えたよ!」
(お、みんなが興味深々な目を向けてきた。)
「それではもう一つ、先生が『奇跡のマイ箸』って呼んでるミラクルなお話もしちゃおうかな。」
と僕は調子に乗って、もう一つ体験談を続ける。
「その奥さんと結婚する前のことなんだけど、彼女にプレゼントを贈ったんだ。
ちょうどその頃先生の友達がエコのために割り箸ではなくマイ箸を使おうということを仲間内で広めてて、先生もマイ箸を買おうと思ったのね。
それで通販雑誌の中から見つけたカラフルな色のマイ箸を選んで、自分の分と彼女の分と選んで買ったんだ。
たくさんある色の中で、自分のは青、彼女のは赤に決めた。
そして彼女の誕生日の日にそれを贈った。
そしたら彼女が「えー!うそー!信じられない!」って必要以上に驚きながら、カバンの中から袋を取り出してきてね。
その中に入っていたのがなんと同じマイ箸だったの。
しかもペアで、しかも色も同じ。
マイ箸が欲しいって言ってたので、二人で持ちたいと思ってショップから探してくれたんだってさ。
ねー、ほんとすごくない?
ありえないでしょ。
数えきれないほどあるマイ箸の中で、同じ種類のものを選び、しかもペアで揃えて、しかも同じ日にそれを贈るなんてこと、ありえる?
奇跡だって二人で感動したんだ。」
(女の子が笑顔で目をキラキラとさせながらこちらを見ている。よし!)
「でね、そんな兄妹で同じ生年月日の人と結婚したミラクルや、同じマイ箸を同じ日にプレゼントしあった『奇跡のマイ箸』のミラクルと同じように、あなたが生まれてきたことは、ほんとに奇跡で、ミラクルで、有り難いことだってこと。
それが今回伝えたいことなんだよ。」
っていう感じで話もなんとかまとまったので、僕はホッと一息。
子供達はうって変わって楽しそうに聞いてくれた。
やっぱり体験談が、話す方も聞く方も楽しめるなって思った。
話し終わって、自分が話したにもかかわらず、「それを喜べない人がいるとするならば、それがどれほど難しいことなのかをわかっていないからなのだよ」という言葉が、ようやく自分の腑に落ちてきたことを僕はしみじみと感じてた。
有り難いことが起こったと全身で震えるほどの喜びを体験しているからこそ、妻と一緒に居る幸せが、コンコンと湧いてくるのかもしれないなと、ふと思った。
そして生まれることがそれと同じように有り難いことだってことも、なんとなくわかるような気がした。
私が生まれること。
生まれようとしても難しいのに今私は生まれてきている。
私が生きていること。
いろんな力に生かされて今私は生きている。
私が体験すること。
誰にもできないような体験を今私はしている。
あなたと出会うこと。
星の数ほどもいる人の中であなたと出会った。
あなたと暮らすこと。
違う考え方や価値観を持つ者がこうやって一緒に暮らしている。
僕は、頭でイメージしたその有り難い出来事たちに、『奇跡のマイ箸』で震えた体感を重ねる。
すごいことだよな~。
無限なる選択肢の中で、今、この一つだけが選びとられている。
つくづく自分って、奇跡の集合体なのかもしれないね。
それに巡り合えたことってほんと有り難いよ。
それに巡り合えたことってほんと信じられないよ。
それに巡り合えたことってほんとミラクル。
最っ高じゃないか!
僕はこれからも、その体感に敏感でいたいな。
ありがたさに身震いしながら、生きていくんだ~。
山地 弘純
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