「ようこそ、善住寺へ。
みなさんのことは呼び捨てで呼ばせてもらいます。
今日からこの善住寺の子供として、みなさんと向き合って行きます。
先生にとって35人の子供。誰ひとり分け隔てることなくみんなに接していくつもりです。
どうかよろしく。」
今は学校などでも「さん」付けで名前を呼ぶ時代だけど、あえていきなり呼び捨てで距離を縮めようと思う。なぜなら君たちは今日から善住寺の御本尊さまの子供になるのだから。
まずはそんな挨拶から始まった寺っ子体験スクール。
大半は町内の子供達だが、神奈川県や岐阜県、大阪府など遠方からわざわざ来てくれた子供達もいる。
親子のように、また師と弟子のように、この二日間を過ごし、ご縁を深めていった。
今年のテーマは「がまんのこころ」。
不況といいながらも、なに不自由ない暮らしの中で、望むものは何でも手に入るという時代の中で、どう自分を磨いていけというのか。
苦しいことがあったらすぐに逃げ出し、頑張るという言葉に嫌悪の過剰反応を示し、原因を自分でなく他人に求める風潮の中で、どう変えていけというのか。
僕達に与えられた宿題は解けることなく、そのまま子供達に受け継がれていく。
たかだか二日間、こぼんさんの真似ごとをしたからといって、なにが変わるというのだろう。
それでも言葉としてだけは口すっぱく残してやろうと思う。
「特に君達にいっておきたいことがある。いつもすぐ口に出したくなるあの言葉は言わないようにしてみよう。『え~!』とか『やだ!』とか言わないように。」
おつとめと座禅。今年もこの短い一泊二日間に4セットもこなす。
1セットの内容は、おつとめ20~25分、座禅15分の計35~40分もの時間を費やす。
まさにこれこそ我慢の時間だ。
それに加え、写経や写仏。
そうじや草取り。
きっと疲れることもあっただろう。
退屈なこともあっただろう。
しかしみんなが出そうになるその言葉を飲み込みながら寺っ子を満喫した。
どうかこの非日常空間であるお寺の生活で得た「がまんの心」を、少しでも日常の中で生かしていってもらえればと思う。
またそれをすっかり忘れたころには、お寺に来るといいよ。
君たちはもうずっとずっと仏様の子供としてご縁結びをしたのだから。
「なすが嫌い?嫌いじゃない、好きへの途中だよ!」
好き嫌いの多い子供に言った言葉。
「もっとみんなで助け合えよ。自分だけ助かればいいじゃないだろ!」
『宇宙船地球号』というゲームの時に思わず叫んだ言葉。
「ちゃんと靴をそろえなさい。人の分が散らかっただろ!」
他人の靴を蹴り飛ばした子への言葉。
そして何より「がまん」
「なにごとも思い通りにならない事の方が多いんだよ。明るく工夫していこうな!」
心に響けよと鳴らす梵鐘。
2013年、夏。
(完)
山地 弘純
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