棚経とは、お盆にご先祖様を迎えるため、各家々のお仏壇にお経をあげて回ること。年に一度の家庭訪問ともいえる夏の行事。 特にふるさとの宅配便のように楽しみに待っていて下さる都市部の方々との時間は、今年も僕の心に多くの彩りを…
「ご飯だから早く帰ってきなさい。」「でも父さんまだお施餓鬼中でしょ。」「なに言ってるの。父さん、もうテーブルについてるから。」 え・・・。じゃあこのかすかに聞こえてくるお経の声は。僕は一瞬きょとんとするが、すぐに理解で…
うだるような真夏の暑さに輪をかける子供たちの熱気。走り回り、飛び回り、まとわりつく疲れ知らずのパワー。響き渡る歓声。今年もまた、この季節がやってきた。 「ずっと中断している夏休み子供修養会を復活させたい」という父の言葉…
お坊さんになったにもかかわらず、僕はお墓参りや法事に行くことの意味がわからなかった。 今日は見たいテレビがあるんだよ。明日は友達と遊びたいんだよ。生きている自分が一番大事だろ。死んだもんのところに行ったって、意味ない…
四国遍路より帰ってすぐ、僕は善住寺の副住職として入山。御本尊様と檀家の方々への報告法要を行った。 総代役員の皆様が代表で参列し、僕が帰ってきたことを喜んで下さる。そして、「これで善住寺は安泰だ」みんな口をそろえてそう…
土砂降りの雨で びしょぬれになった土佐中村市。防水加工のしたウインドブレーカーは雨を通して意味をなさなくなっていた。出航したばかりの舟に取り残され、寒さで震える僕にあるおじいさんが声をかけてくれる。僕は「喫茶ヨコハマ」…
『被災地に届け この想い』 ~愛、降り注ぎますように~ 僕らは悲しいくらい弱くて、もろい生き物です。それでも、人は支え合っていきていくもの。 人はとても優しいです。人はとても温かいです。そして、それを感じ…
五月十六日、スタートして四十一日。いよいよゴールが目の前に迫っていた。 八十八か所を最後までたどり着くことを、結願という。僕の願いは何だったのだろう。やっぱり自信が欲しかった。揺るぎないものが欲しかった。多分そうだっ…
徳島県にある鶴林寺もまた四国八十八カ所有数の難所だった。途中で食事する所もない、歩き遍路にとっては孤立したお寺だった。 みんなそんなことは下調べしてわかっていて、宿からお弁当を作っていただいたり、お店でパンを買ってきて…
「お遍路さんは一日に3軒以上托鉢を行ずべし。」 遍路本にはそう書かれており、家族からも托鉢をしなさいと言われていたので、毎日ではなかったが時には歩みを止めて托鉢を行った。 加行後授けていただいた托鉢許可証を身に持ち、…