2014年3月 心の相談員最終レポート
「講習内容によっては自己洞察によって精神的につらいことが出てくることもあります」という文言に、また不眠症が再発したらという不安が頭をよぎった。
申し込み用紙を何度も何度も見返しながら、それでも、勇気を出して進んでみたいって決めたんだった。
それはただ敷かれたレールの上を進まされていた僕が、初めて自分でやりたいと思ったことだったかもしれない。
僕たちにとっての初回は九期生の方々の卒業式で、懇親会の時に「この二年間はほんとにかけがえのないものだった」と、輝いた目で熱く語って下さったタカコさんやリエさんの姿はとても眩しく見えたものだ。
そしてその日の夜から、なぜか長く付き合ってきたかのように一緒にいるようになった友達との出会い。この心の相談員で一緒になった友達は、過去の友達とは違うって感じる。なんでも共有できてしまいそうな、なんでも開示できちゃうような、僕が今まで持てなかった感覚を与えてくれる関係となった。
毎回一番前でかぶりつきで講義を受ける彼らと仲良くなったおかげで、大学の頃から定位置だった席の一番後ろから脱却し、席の一番前に座ることとなった。変わりたいって強い気持ちには、それを叶える出会いも不思議ともたらされるということも改めて感じる。
二年間、あっという間だった。しかし僕にとって、これほど濃密な二年間がこれまでにあっただろうか。
受講生駐車禁止の太融寺境内に車を止めっぱなしにして、しかも閉門時間で車を出せなくなってしまったこと。それで出してほしいとお願いに行ってしょっぱなから怒られたこと。これも今となってはいい思い出。僕は許可をもらって来たから、今になって禁止なんておかしいと譲らないなんて僕も案外勇気あるねと笑える。
いきなり貼られた問題児のレッテルだったのかも(笑)
それぞれが雑誌を切り抜いて一枚の紙の中にみんなが一緒になって世界を表現するコラージュでは、エロい雑誌ばかり買ってきて貼りまくった。
女性陣からはややブーイングやたしなめを受けながら、先生からは「彼は奮闘してるな~」と褒められながら、好き勝手に作ったんだった。
シェアの時にはみんなで作るものを破壊したい願望と説明したが、本当は自分自身を壊したかったのかなとも思う。
エゴグラムでは僕の表面と内面のずれが大きいことわかった。
他人にものすごい母性性を発揮したいと願っているが、僕の内面はものすごい父性性が強いという結果が出た。そのずれが大きい人ほどしんどいらしいし、自分でもそれがわかっている。
先生はぼそっとつぶやかれた「優しいんだな~。マザーテレサみたいな人になりたいんだな~」って。そして「FCを上げて行こう!」と先生に助言をいただいた。フリーチャイルド。自由奔放な子どものような心。
具体的にどうすればいいのかと漠然と思っていると、本の中にいい記述を見つける。
「きれい。すごい。やってみよう。などの感情を込めた言葉を積極的に使うとよい。」ということ。
僕にぴったりかもと思い、以降実践している。
茶化したり、感情をはぐらかすのは得意だったのだが、もっと素直に表現していきたいし、そこが閉じてるって気付けたから。
早く言葉と本心を一致させたいなって思う。それに父性性を緩め、母性性にもっとアプローチしていきたいとも。
クルーザー物語のワークでは、登場人物に好き嫌いの順位付けをした時、見事にグループの全員が違った答えだった。話し合い、笑い合いまとめていく過程がとても楽しかった。
実生活の中でも笑っていられればいいのだが、なかなかそうはいかない。人が百人いれば百通りの考え方があることを思い知らされた。価値観は誰一人として同じ人はいないのだと、知っておくことが大切なのだと思う。
それをすり合わせていく作業もなかなか時間がかかるが興味深く、これが大事なのだなと感じた。
高野山での実習は、もしかすると一番僕にとって感じるものが大きかったのかもしれない。 四十九日体験ツアー。夢の応援ゲーム。木に抱きつく瞑想などなど。
それは僕がお坊さんだからなのだろう。お坊さんという職業が世の中から必要とされている実感に乏しかった僕にとって、日常に繋げて行ける真言宗の可能性を教えていただけたことはとても嬉しいことだった。
特に夢の応援ゲームのとき、「日本一のお坊さんになりたい」などみんなが立派な夢を語って行く中、僕は「家族全員で旅行に行きたい」などという小さな夢を語ってしまった。
みんなの支持はいまいちで、「そんなの夢じゃない。その気になれば明日にでも行けることだ」という言葉もいただいた。
おかげさまでその一年後、僕は生まれて以来初めての家族全員誰一人欠けることない旅行をし、三十七年越しともいえる夢を叶えることができた。
アフォメーション。口に出し、言葉にするという力はこんなにも凄いものかと驚いた。
二年目には大きく人数が減ってしまって寂しかったけど、長浜講習ではみんなが日本酒をたくさん持ち込み、朝まで飲み明かした事は忘れられない思い出だ。
僕の地元のお酒「香住鶴」、大好評だったな~。
そして最後に三ケ所の施設実習。二ヶ所でいいということだったが、打診して一度は断られた施設から、やはり来てほしいとの連絡を受けたため行く事にした。
児童養護施設では僕の決めつけたイメージをいい意味で崩された。
家族と離れ離れになった可哀そうな子供たち。僕は勝手にそんな暗いイメージだけを植え付けてしまっていた。もちろん内面にある傷つき体験は深いのかもしれない。ただ、施設のみんなが一つの家族として乗り越えようとしている面も見ることができて、僕は嬉しかった。
かわいそうだ。不憫だ。そんなことを勝手に決め付けるなよと、子供たちから言われているような気がした。
病院のデイケア室ではおじいちゃんおばあちゃんとの触れ合い。これは僕にとってお寺で味わう感覚と大差ないものだった。
意外だったのは、院長先生からお坊さんが期待されているということ。
「我々は癌の告知もします。またそれ以上に大きな問題となってきている認知症もあります。これらの方々に未来をあきらめないことを伝えていくには、仏教というものを学んでいる人の存在はとても大きい。」
そして冗談っぽく「ここで勤めてみないか」とも言われた。それはとてもありがたい言葉だった。
最後に行ったのは母校の中学校。保健室で子供との関わりや、無気力な生徒の増加にともなう夢をもつための取り組みのお手伝い。
また、いのちの授業などをさせていただいた。これも得難い経験となった。
今、僕はきっとあの時の九期生の方々と同じ顔をしているはずだ。おかげで、自己洞察における反作用はでることなく、不眠症をもう乗り越えたという確信も持つことができた。
人の心に寄りそえるようになりたいなどとよく言ったものだ。自分のことばかりじゃないかと思う。
いや、この講習ではそれでいいのか。その先はスピケアで学びたいと思う。
それにしても、心理学というのはなんという難しいものだろうか。ただ人の話を聞くということが、これほど奥が深いものだということさえ知らなかった。
課題は山積。やはりこちらから意見したり答えを言ってしまわないということが一番だろう。わかっていても言ってしまうので、気を付けたいと思う。
山添先生からは引きこまれるような聴く姿勢。
西川先生からは女性という異性から見る立場。
大下先生からは真言教理実用化への熱意。
大塚先生からは覚悟。
松本先生からは「もののけ姫」を使った楽しい学び。
などなど、とても素敵な講習をしていただき、ありがとうございました。
2年間の心の相談員の学びを終え、そして僕はスピケアへ進む。
山地 弘純
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