都市部以外の棚行は毎年日程が決まっている。
8月2日から13日までの間、午前中に各村々をお参りする。
最近は多くのうちでクーラーを入れて下さったり、扇風機を回して下さったりして、僕たちが少しでも快適にお勤めができるように気を付けて下さる。
ほんとにありがたいな~と思う。
あるお宅では、おばあちゃんがお孫さんに言った。
「うちわで、お寺さんの後ろから扇いであげて」
「うん」とよく言うことく聞く小学校低学年の女の子が、一生懸命僕の後ろからパタパタと扇いでくれる。
おつとめをする僕の背中には、うちわで流されたおとなしい風が運ばれてくる。
「なんて涼しいんだろう」
僕はそう思った。
ガンガンに冷えたクーラーより、強風に設定された扇風機より、それはとても心地よくて、涼しく感じた。
ひょとするとその風は、体を通り越して、心まで届いているのだろうか。
僕の心の内側にに、爽やかな風が吹き抜けた。
おつとめが終わって後ろを向くと、小さい子たちが並んでいる。
「ありがとう。すごく涼しくて気持ちよかったよ」
そう僕が言うと、扇いでくれたその子は恥ずかしそうに下を向いた。
心と心のキャッチボール。
言葉が介在しなくても、通じるものがある。
それはもしかすると、便利になればなるほど忘れられていくものかもしれない。
それは電車の自動改札であり、インターネットの通信販売もきっとそう。
心のない機械相手のやりとりの増加。
次々に進化する世の中で、それは置き去りにされてしまいそうなものなのだと、多くの人がほんとうは気付いているはずだ。
僕もこのことで再確認した。
時代遅れかのようなうちわで扇いだ風のなかに込められた優しさを。
そしてそれを受けることの心地よさを。
そして、それを伝えてくれるおじいちゃんおばあちゃんに感謝の気持ちでいっぱいだ。
どうかいつまでも受け継がれていきますように。。。
山地 弘純
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