正智院で過ごす、長く静かな夜はあの日を思い出します。
約15年前、修行道場「専修学院」へ入る前夜です。
僕はあの夜、ドキドキしながら、床に入っていました。
先の見えない一年間への不安と恐怖。
そして「どうやってもリタイヤせずに卒業せねばならない」という「ネバ」という執着が、僕を苦しめていたんでしょうね。
リタイヤしたっていい。
僧侶になんてならなくてもいい。
そんな逃げ道をつくってあげられなかったのは、誰でもない僕の思い込みだったんだな~と今では思えます。
たっぷりと睡眠をとって修行に入りたかった僕の思惑ははずれ、その夜は一睡もできませんでした。
きっと潜在意識は「やりたくない」って言い続けていたんでしょうね。
僕はこの修行の途中から、深刻な不眠症に悩まされることになります。
それは10年近くにも渡って続いた、苦しい苦しい記憶です。
そのスタートともなったこの正智院での夜はどうもトラウマのようになっていて、僕の脳裏にあの夜の記憶がシュッとフラッシュバックするように挿し込まれるのです。
布団の中で何度も寝がえりを繰り返していた僕は、大いなる節目の儀式を控え、今回も眠れないのかなと思っていました。
ハッと気が付いた時、僕は眠っていたことに気付きました。
スマホで時刻を確認すると4時半を示していました。
なんだよ、まだまだ早いじゃないかよと思いましたが、でも5時間くらいは寝れたんだな~とホッとしました。
また一つ乗り越えることができたんかな~。
なんだか静かな自信が少しづつ身体に広がっていくのを感じました。
「眠れたんだし、心と身体が一致しているってことだよ。」
そんなメッセージを受け取りました。
うん、僕は今回は大丈夫だ!
そう感じると、自然と顔がほころびました。
雨も上がり、朝6時20分、正智院から金剛峯寺へと出発です。
車で送ってくださるという申し出をお断りして、下駄をカランカランいわせながら、歩みを進めていきます。
山地 弘純
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