お坊さんはかっこ悪い。それが敬遠し始めた一番の理由だった。
野球選手になりたい。
消防士になりたい。
美容師になりたい。
中学の授業中、目を輝かせながら夢を語る同級生たち。
先生は僕に言った。
「あ、お前はウチを継がなあかんよな。」
僕は答えさせてさえもらえなかった。
いや、当てられても答えられなかっただろう。
自分で先読みしていた。
周りからもお寺を継ぐのが当たり前という目で見られ、その中で「サラリーマンになりたい」とうつむきながら答えることの滑稽さを。
ただ、話に聞く所には、息子さんが後を継がずにヨソに出てしまったというお寺も増えてきたとのことだ。
僕もどこか都会に出たい、そう思った。
結局、僕はサラリーマンになりたいっていうより、お寺から逃げたいっていうだけなんだろ?
いや、でも本当に逃げたいってわけじゃないんだろ?
問いかける自分の気持ちが交錯する。
じいちゃんとばあちゃんは有無を言わせなかった。
「絶対にお寺を継がなあかん。仏さまのご飯をいただいて、ここまで大きくしていただいたんだから。」
父さんは言った。
「もし本当に夢があるのなら、お寺を継がなくたっていい。本当に夢があるなら応援してやる。」
僕は何度か弱々しく口に出した。
「サラリーマンになりたい。」
両親は言った。
「そんな漠然とサラリーマンなんてあかん。医者になりたいとか書家になりたいとか、もっと大きな夢はないんか」
なんだ・・・ 結局継げってことじゃないか・・・。込み上げるあきらめのため息と、何も見つからない自分への失望感。
高校卒業後、僕は真言宗の聖地、高野山へ進学することになった。
高野山大学。この場所に来て初めて知った。
消防士や美容師になりたいと胸を張って答えた彼らと同じように、「お坊さんになりたい!」と、目を輝かせながら言える人達がいるということに。
僕には中学卒業とともに高野山高校に入学するという選択肢もあった。
だが、僕は断固として拒絶した。
地元で中学時代からの友達と楽しく過ごしたい。
サッカーもしたい。
そんな僕の訴えに対して親も強要することなく、「高校は地元でいいか」と許してくれた。
ある時、隣町のお寺の僕と同級生の男の子が、高野山高校に入ったというウワサを聞いた。
面識のない僕は勝手に推測した。
「あ~かわいそうに。親から無理矢理行かされたんだろうなー」と。
それから3年。
同じく高野山大学に進学したその男の子と仲良くなった。
いろいろ話していく上で、僕は彼の口から驚愕の事実を知る。
「僕は次男だからな。兄貴が後を継ぐよ。でも僕は高野山高校に行きたかったんだ。お坊さんになりたかったからな。」
同じ大学で、同級生で・・・。
なのに、僕と彼の現在地が違うと実感した。
僕はスタート地点にさえ立っちゃいない。
彼はもうスタートして、はるか彼方を走っているんだろう
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山地 弘純
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