前日の午前中に降りつけた激しい雨。突如頭上からたたきつけられた、まさかまさかのアラレ。
それは御本尊様が現れることに対する自然の感応か。嬉しさで零れ落ちたかのような空からの涙が、御開帳の序章だったのかもしれない。
口にマスクをかけた住職と僕は、閉ざされたままの扉の前でついにその瞬間を迎えようとしていた。
みんなが唱える般若心経を背中に受け、いよいよ住職がそのカギに手を添えた。
ギ~っという音をたてて静かに開かれていく扉の中には、形的には決して大きくないのかもしれないが、なんとも包み込むような雄大さを持つ大日如来様がそこにおられた。
すごい。僕はそう思った。生まれてこの方目にしたことのない仏様を拝み、信じ続けてきた。50年に一度の重みが、中からあふれ出してきたような気がした。
住職はじっとこちらを見つめる大日如来様の手に、きれいな五色の糸を結んだ。
気のせいか、その手が震えているような気がした。
住職が高校一年の時以来の御開扉。50年とはなんと遥かなる時なのだろう。
五色の糸は、皆さんから御奉納いただいた膳の綱と呼ばれるサラシ木綿に繋がれた。等間隔で立てられた竹を支えに、長く長く繋がれた膳の綱は、約五百メートルほど離れた檀家さんのお宅まで張り巡らされた。
このサラシに触ると、御本尊様と握手ができる。この下をくぐると、御本尊様の功徳が降り注ぐ。膳の綱にはそういう言われがある。
そして、皆様とともにそれを分かち合う時。いよいよその日がやって来た。
4月25日(日)。
「善住寺御開帳大法要」
見上げた空には一点の曇りもない。ただひたすら青い。寒さの分、霞もかからない深く美しい青が空から染み出したのかもしれない。
全身に震えが来そうなほどの感動が体を走る。
やっぱり晴れた。これほどまでの晴天は、御本尊様のお力に違いない。僕は、確かにそう感じた。
みんなが準備の段階で、なんども雨の対策について話し合おうとした。
両親は言った。
「絶対に雨は降りません」
僕は反論した。
「それでもイベントの準備をする僕たちの立場からすると、雨の準備をせざるをえない」
僕以外にも、みんながその心配をしていた。
でも親たちは、頑として言い続けた。
「絶対晴れます!大日如来様が絶対にお天気にしてくださるから。」
山地 弘純
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