お盆の月。
20、21日の1泊2日。
夏休み子供修養会の「寺っ子体験スクール」は善住寺で行われた。
まさに嵐のような2日間だった。
朝9時に広間に全員集合。
早い子は8時過ぎにはやってくる。
当初32名の申し込みも、発熱や怪我により3名の不参加。
飛び入りで1名の参加により30名で開会された。
申し込み用紙に書いておいた最初の約束。
「大きな声であいさつして入って来て下さいね」
その言葉を守らせようと、こちらから大きな声であいさつする。
「おはようございます!」
物怖じしない声、人見知りした声など、いろんな声が響き渡った。
何度も来ていて慣れた様子の子。
友達と一緒だから安心している子。
これから何が起こるのかと不安そうな子。
一人での参加で寂しそうな子。
まずはこの子達をうまく馴染ませなければいけない。
仲良く、誰もが楽しめるように。
心得説明会で様々な注意を与える。
今年のテーマは「感謝のこころ」。
どうやってこのテーマに結び付けていくか。。。
それと「え~!」とか「やだっ!」てすぐに言いがちな子供たちに釘をさしておく。
また、僕の独断と偏見で班を編成した。10人づつの3つの班が出来上がった。
一通り注意をあたえると、早速衣に着替えさせた。
もっとこぼんさんの衣装に抵抗があるかと思いきや、すんなり受け入れてくれる子供たち。
かわいらしい30名の一休さんができあがった。
ほんとにみんなよく似合う。
まずは本堂の外で記念撮影。
なんとか笑顔をと思うが、どう笑わそうとしても硬い硬い表情。
ま~まだ無理もないか。。。
それにしても、ぎらぎらと照りつける太陽。やっと訪れた夏の日差し。
あ~、いろんな意味で熱い一日になりそうだ、そう思った。
10時前から本堂で入門式を行う。
ここで「よい子のお誓い」をしてもらう。大きな声で誓いの言葉を仏様に向かって唱える。
そしてみんなが住職の前に一人づつ進み出て、「いい子になりますように」と散杖といわれる細長い棒で、頭に水を注いでもらう。
みんな緊張の面持ちだ。
それからおつとめをして、座禅をする。
おつとめと座禅は、は入門式と夕べのおつとめ、朝のおつとめ、終了式の計4回行う。
これがこのスクール一番の柱である。
まずきちんと正座させ、「合掌」と「礼拝」の仕方を教える。
そして「よいこのしおり」に従ってお経を拝む。 一生懸命般若心経や諸真言についてくる寺っ子たち。
子供の声はほんとうに透き通っていると改めて感じた。
ただ純粋に声を出している。
それに引き換え僕は、いい声を出したいという色気で作られた不純な声なのかもしれない。
座禅も真剣そのもの。半迦座というあぐらの右足だけをももの上にのせた座り方をし、10~15分じっと座る。
薄暗い本堂で、静かに目をつぶり、等間隔で鳴らす鐘の響きとともにゆっくりと呼吸し瞑想に入っていく。
「はいて~。 自分の中の全ての悪いものをだすように・・・」
「吸って~。 新しい空気で自分の中をまっさらに入れ替えるように・・・」
その言葉に合わせて呼吸を繰り返す寺っ子たち。
「いくつの音が聞こえるか聞いてみて。 セミの声や、鳥の声、川の流れ、ひょっとしたら自分の心臓の音も聞こえるかもしれないよ」
僕の誘導はここまで。
鐘を止め、言葉を止める。
後に残るのは静寂のみ。
何を考えているのだろう?
どの程度の苦痛を感じているのだろう?
しゃんと背筋を伸ばしたままずっと動かない子。
時々苦しいような大きなため息をつく子。
体が硬いため、何度も半迦座の右足を上にあげたり降ろしたりする子。
眠気と戦いカクンカクンなりながら、なんとかその姿勢を保とうとする子。
どの子も健気だ。
不真面目にしようとする子は一人もいない。
「この学年の子は個性が強くて大変ですよ。
問題児だらけで・・・」
寺っ子スクール開校の前に聞いていた噂話だ。
この子たちのどこが問題児だっていうんだ。
そう反論したいくらいの、かわいいやつらだ。
猫をかぶっているのか。。。
だけど、猫をかぶれるくらいならたいしたものだ。
しかも2日間も。
11時過ぎから「数珠つくり」をする。
自分で選んだカラフルな珠をゴムの紐に通し、腕輪念珠にする。
一人二個。
自分の分と誰かの分。
弟や妹の分。お父さんやお母さんの分。それは子供たちによって違うが、嬉しそうに色を組み合わせていく。
できあがった数珠は、どの子も宝物のように大切にされていた。
その数珠をつけて、残りの日程を過ごしていく。
12時前に大きな釣鐘をつき、食事をする。
合掌し、僕の後に復唱する。
「一滴の水にも、天地の恵みが宿り、
一粒の米にも、たくさんの力が加わっています。
好き嫌いをいいません。
量の多少をいいません。
ありがたくいただきましょう。
いただきます!」
あまりにうるさくなければ注意せず、多少のおしゃべりをさせながら食事を取る。
いつもテーブルと椅子で食べつけている子供たちにとって正座は苦痛なのだろう。
ただでさえおつとめで足が痛くなっているようだ。
しばらくすると足をくずさせる。でも立てひざについては厳しく注意した。
食べ終わってからも感謝の言葉を唱える。
「ありがたく食事をいただきました。
今いただいた命は、私達の中に生きています。
その命を無駄にしないように一生懸命努力します。
ごちそうさまでした!」
見に来られてた仏壇屋さんが感動していた。
言葉の意味もさることながら、やはり子供の純粋さから来るものだろう。
お昼の休憩では男の子のほとんどはサッカー。
女の子たちは手遊びしたりしている。
年上の子達がうまく引っ張って、仲間にいれてあげている。
僕も一緒にサッカーをする。
今年も大人げなく本気を出した。
これで薄くなりがちな僕の威厳をアップさせる(笑)
午後は1時20分頃から自己紹介ゲーム。
「じゃんけんサイン集め」「アップダウンキャッチ」のゲームでみんなの自己紹介とともに仲良くなるきっかけ作りをする。
「僕のことはコウジュン先生って呼んで下さい。」
すると飛び交う質問の嵐。
「先生の好きなものは?」
「先生何才?」
「先生結婚してないの~?」
子供たちにいじめられる僕。。。
だけど先ほどの休憩時間とこのゲームでだいぶ打ち解け、かなり笑顔が見られてきた。
よし、今年は早いな。
毎年は夜くらいに見られる雰囲気がもう出てきている。
14時過ぎから写仏。
善住寺内のどの仏様でもいいから書きなさいと、絵馬に絵を描かせる。
みんなが思い思いの場所に散らばり、写生した。
ミクが引き連れた女の子チームは、全員同じ場所に座り、水子地蔵を書いていた。
なかなか絵が巧い子もいる。絵の苦手な子の絵も含めて、全てに味がある。
集った絵を眺めながら、おもしろいな~って思った。
もっと時間がとれればな~とも思う。
15時より夕べのおつとめ。座禅。
修行してるって実感が楽しいのかもしれない。
ほんとに頑張っている。
16時くらいからちょっとお寺の墓地へ散歩。
歴代住職墓とか動物のお墓に連れて行く。
いのちのつながりを説明し、今自分がいるのもご先祖さまのおかげなんだよ~と話す。
わかったのかわかってないのか、周りに落ちている木の枝や石ころの方が気になるようだ。
振り回したり、けったり。 僕は「こら~!」ってしょっちゅう言っている。
それでいて聞いていないのかと思うと、びっくりするようなことは覚えている。
夜、住職が「私のお父さんは・・・」というお話をしていたら、不意にミズキが、
「良照先生でしょ!」
大事なことは覚えてないくせに、なぜかじいちゃんの名前などずっと覚えてるんやから。。。
ほんっとにしょうがないな~。。。
16時半くらいから銭湯に出かける。
スタッフ総動員で車を出す。
以前は浜坂温泉「ユートピア」だったが、今年は湯村温泉の「薬師湯」
銭湯内でも要注意。
しっかり見とかないと泳ぐし騒ぐ。
今年は他のお客がほとんどいなくて助かった。それに比較的おとなしく入ってくれた。
お風呂上りにジュースをおごってあげる。
これも子供たちにとっては楽しみの一つだろう。
帰ってきたら18時。
鐘をついて、夜ご飯。
はっきりいって裏方スタッフはめちゃめちゃ大変だろう。
4食をまかわなければならないから。
食後にお楽しみ会。
まず住職の法話。親への感謝の心をお話していた。
続いて、紙芝居「くもの糸」。 スライド幻灯「のっそりがまきち」。
子供たちは熱心に聞いている。
最後にきもだめし。少し離れた真っ暗な阿弥陀堂の中に昼間書いた絵馬を奉納してくる。
BJMの般若心経のCDとスタッフの幽霊。
かなり怖かったという子と、笑いながら帰ってきた子があったが、なかなかに好評。
特に、ナオヤのビビリ方は最高だった。
みんなで布団をひき、21時半過ぎに消灯。
雑魚寝。 一枚の敷布団に一人などということはない。 布団を横にして二人で寝かせる。
今年は全く不満の声が出なかった。 そんなにひっつかんでいいだろうってくらい寄り添って寝ている。
暑いだろうに。。。
疲れていたのか、子供たちもけっこう早く静かになった。
一緒に寝るのは母さんに任せているので、その後のことはわからないが・・・。
朝は6時起床。
半鐘の音でみんなが起きる。
といっても、半鐘も女の子の班長ミウにつかせている。
目はほとんどの子が覚めているようだ。
布団を自分達で片付け、まずはお寺の掃除をする。
寝ぼけ眼でだらだらしがちな時間帯に渇をいれながら、庭の掃き掃除や廊下のふき掃除をさせる。
終わると朝のおつとめ、座禅。
チナは僕より姿勢がいいんじゃないだろうか。
半迦座も法界定印もとても美しかった。
優しくて真面目な子だ。
ただ、こっくりこっくりなる子も何人かいる。
やっぱり朝はしょうがないかなって思った。
一昨年には、ひっくりかえって後ろの障子に頭をぶち当てた子もいたが、今回は大丈夫だった。
居眠り寺っ子の肩を、警策でパシッてたたく。
びくっとして意識をもどしていたようだ。
そして8時過ぎに朝食。
かなりおなかが減っているようで、おにぎりが飛ぶようになくなる。
だが、やっぱり体が小さい子は食べない。
まさに僕の小さいころのようだ。
なんで子供の頃、もっとモリモリ食べなかったのだろう。。。
9時過ぎから草むしり。 大きな草の山を作る競争をしたら、それなりに一生懸命やってくれた。
ユウゴは目立たない子だったが、草むしりの真剣さで目立っていた。 いい子だな。
終わった後に雨が降ってくる。今年はこんなんばっかりや。。。
でもタイミングとしてはよかった。
10時から写経。 寺っ子たちはこの時も別人のような集中力を出す。
本堂は別空間。ここに入るとみんな静かにしなければならないんだと、もう完全に理解したようだ。
質問も小声でしてくる。
字の上手い下手は関係ない。 どれだけ一心に写経用紙に向かってくれるかだ。
誰もがいい表情だ。 かっこいいぞ、みんな!
うんうんとうなずきながら見守る僕は、完全な親馬鹿状態なのかもしれないが。。。
11時から活け花。 花の先生は母さん。
僕はデジカメ係。 たくさん撮りまくっていた。
するとチカが「先生ちょっと逃がしてきて」って言う。
見ると一匹のクモが茎につかまっていた。
「クモを殺さないようにしないと。。。」
紙芝居の内容を覚えているようだ。
へ~、嬉しいな~
花も個性的に活けあがった。
みんな僕よりずっと花心があるようだ。
活けた花と共に、一人づつ記念写真を撮る。
みんな満足気だった。
12時に昼食。 手巻き寿司が毎年の定番メニュー。
もう大人気。 真ん中に盛った酢飯と具材。
自分で巻いて食べるのだが、先に先にと大競争。
あっという間に減っていく大皿の中身に、食べるのが遅い子も大慌てで口に詰め込む。
見ていておもしろい。 一年生のタイキまでもが大丈夫かってくらいたくさん頬張っていた。
みんなから大絶賛の手巻き寿司。 これは来年もやるしかないだろう。
1時から反省会。ふりかえりシートに記入していく。
家族への感謝の言葉も書かせる。「~してくれてありがとう」って。
それにしてもヨシキ、自分のいいところは?って質問に、「ありません」って書くんじゃないよ!
2時からビンゴ大会。 景品はお供えのお菓子。 全員に渡す。
みんなが盛り上がっている。 僕もさらに盛り上げようと声を枯らす。
ガイナーレの応援用メガホンで大声で司会をした。
「リーチ」のポーズと「ビンゴ」のポーズを考えさせるのがポイント。
みんなノリノリで叫ぶ。
「リ~~チ!!」
「ビンゴ~~!!!」
3時半から父兄も参加の終了式。
住職から「2日間よく頑張ったね」と、全員に終了証が渡される。
その後で住職から子供たちと父兄に向けてあいさつがある。
「この経験を生かして、いい子になるんだよ」
そんな言葉で締めくくられた。
僕は寺っ子たちを正座し直させ、仏様やスタッフにおじぎさせる。
「ありがとうございました!」
続いて向きを父兄の方に変えさせる。
寺っ子に来させてくださったこと、普段お世話になっていること、様々な感謝を込めさせた。
「ありがとうございました!」
打って変わって照れくさそうな子供たち。
「声が小さい! もう一回!」
スイッチが入りなおしたようだ。
「ありがとうございました!」
今度はちゃんと大きな声で言った。
本堂を出て、広間で衣を脱ぐ。
「まだ帰りたくない。今日も泊まりたい。」
そんな嬉しい声にも、僕はすぐさま答える。
「お前達と一緒にいるのは2日が限界や。
先生疲れたわ~」
ジュンは何ともいえない申し訳なさそうな表情を浮かべて首をすくめた。
名残惜しい気持ちもあるが解散。
「さようなら」のあいさつをしてお寺の玄関を出たとたん、表情が甘えたものに変わっている。
さっそくお母さんやおばあちゃんを困らせている子もいるようだ。
「おい!おばあちゃんに荷物を全部持たせて手ぶらで帰るなんて何やっとるんや~!」
そんな僕の叫びが響き渡ったのを最後に、寺っ子体験スクールは終了した。
怒りすぎて声は枯れまくり。。。
あ~くたびれた・・・。 とにかく今は休みたい。
幸浩、美紅、美羽、瑞樹、千奈、佳輝、一輝、明日花、輝、直矢、知花、美歩、瑞基、あゆみ、龍一、彩葉、耀希、明夢、美波、恵士、旬矢、翔、悠吾、充希、賢哉、直希、潤、聡太、泰規、篤。
お前達のパワーには正直参ったよ。
でも僕も楽しかった。
誰一人見落としてないよ。
みんなのこと見てたからな。
どうか仏様との御縁が、君たちの行く手を照らす光となりますように。。。
修行の真似事をしたからと、わずか2日間。
たったそれだけでなにか変わるわけではない。
それくらいでいい子に変わるなら、苦労なんてしない。
それでもこの経験がいつかどこかできっと芽吹く。
そう信じていたい。
この前と言ってることが違うかもしれないけれど。。。
そんなこと考えずただ淡々とスクールを遂行したいといいながら、やっぱり何かの見返りを期待する僕は、どうしようもないのかもしれない。
それは自己満足を満たしたいだけなのかもしれない。
お坊さんは人々を導かなければならないなどというたいそうな使命感にかられ、できもしないのに導く真似事をする。 そんな違和感は常にかかえてきた。
「おい、背伸びすんなよ」 そんな声が聞こえてくるようだ。
もっとできたはず。。。
もっと伝えれたはず。。。
寺っ子スクールを終えたばかりの今だからこそ、どうしても自分に毒づきたくなる。
そして、誰かから言われる「そんなことないよ」って言葉を待っている自分もいる。
ただ子供たちの言葉が救いだ。
「来年も寺っ子来るから。 だって手巻き寿司したいもん」
あ~いいのさ。そんな理由だったとしても。。。
なんでもいいや。 来年も待ってる。
山地 弘純
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