子供NGO懐の一員として再び被災地へ。繋がり損ねた前回の忘れ物をとりに。
「お店を営むおじいちゃん、どうされてますか。96才のおばあちゃん、元気にされてますか?お手紙も出さずにすみません。前回、ちゃんと連絡先を聞いておくべきでした。今年はちゃんと繋がりに行きます。待っていて下さい。」
心の相談員を目指して一昨年より勉強中の僕は、被災者の方々の心に寄り添うケアはどうすればいいのか、ずっと考え続けていた。
心の声を聞く機会はつくれないものだろうか。年に一回でも行って一緒にお茶を飲み、一緒にお話をすることがいいのだろうか。被災者の方々のストレスをやわらげるにはどうすればいいのだろうか。心に抱えている話したいことって、どうすれば引き出せるんだろうか。
いろいろと考えるが、一過性の支援に終わらないか不安に思う。あ~、どんな支援がいいのだろう。三度被災地へ赴き、自分が得たものは大きかったが、被災者の方々に対しての支援がこれでいいのかという自問自答は尽きなかった。
そんな僕に教えてくれたのは、懐の子どもたちだった。特に、昨年の文集に記述された佳奈子さんの内容は目から鱗だった。
「私は今、活動中に知り合ったおばあちゃんと文通しています。その手紙に、『生きててよかった。こんなに素晴らしい出会いがあるんだ。たくさんの力をもらいました。ありがとう。』と書いてありました。これを読んで、このボランティアに参加できて本当によかったと思いました。」
そうか。文通か!これこそ継続できる心のケアじゃないか!
我々のお坊さんの支援活動の中にも、パフォーマンス的なものや、自己満足だけじゃないのかと思うような、残念に見える活動もある。大きなことをすることが心の支援じゃない。文通のような小さいことかもしれないけど、長く心と心のキャッチボールができることこそ、最も大切なことなんだ。そう気付かせてもらった。
僕とのご縁を感じてくださった方とできることなら文通しよう。これが今回も炊き出し支援活動に参加したいと強く願った最大の目的だった。
広大な敷地に広がるグリーンハウス矢本の仮設住宅。あやふやな記憶を頼りに人探しをする。「この写真のお二人なんですけど・・・」
だいたいの目星を付けて訪ねていったはずなのに、情報さえも得られない。「息子が亡くなって嫁姑の二人で暮らしてるの」と寂しげな笑顔を浮かべた九十六才のおばあちゃん。優しく介護する息子さんのお嫁さん。「また来年も会いましょうね」って約束をしていた。
もう退居されたのだろうか。それにしても近所同士でも意外と知らないものなんだな。あきらめが頭をよぎった頃、ようやくにお宅を見つけ出した。
庭先にはたくさんのお花があった。僕はなんだか嫌な予感がした。心がざわめきながらチャイムを押すと、七十代くらいのお嫁さんが顔を出された。僕のことなど全く覚えておられなかったが、写真を見せおばあちゃんとの約束通り会いに来たと話すと、驚きと喜びの入り混じった表情でおっしゃった。
「ま~懐かしい。おばあちゃんと私。でもね、おばあちゃんはつい一週間前に亡くなってしまったの。」
予感は当たった。とても残念な気持ちになったが、僕にしかできないこともあると思い申し出た。
「あの、今年も家の中に入らせていただいてよろしいですか。おばあちゃんに手が合わせたいです。僕、お坊さんなんです。」
昨年同様、快く中へ通していただいた。すぐに目に入ったのはおばあちゃんの遺影。隣には息子さんのお位牌も。おばあちゃん、あの世で再会したんですね。僕はそれに手を合わせ精一杯お経を唱えた。
お嫁さんとお話をする。一人残され、気の張りがなくなってしまうのではないかと心配したが、別所帯の息子さんとお孫さんが来てくれているらしい。みんなが同じ部屋に集まった。僕は急いで三人分のカニ汁を運ぶ。とりあえずこのお正月はにぎやかに過ごせそうだなと思った。その後はやっぱりこの仮設でお一人で過ごすのだろうかなどと考えながら僕は言った。
「お母さん、僕と文通しませんか。」
「ええ、喜んで。」
今回の活動で、多くの方と連絡先を交換した。もうすでに手紙をやり取りしている方もある。できることなら長く繋がっていければと思う。
そしてこの活動を共にした子供たちと繋がれたこともとても嬉しい。
今回もまたみんなに伝えたいことがある。新温泉町が一部では夢のない町って言われてるのを知ってる?
学生、保護者のアンケート結果を見ると特に自己肯定感が低いということらしい。自分は必要とされていない。自分はダメな人間だと思う。やる気がない。無気力。
大人たちはこの町の未来を悲観しながらも若者を流出をただあきらめている。
そして極めつけは新温泉町の自殺率が近年県下で最も高い町であるということ。
「夢や目標があってこそ復興は進むと思います」という亘理町のご婦人方の言葉にもあったように、夢とか希望がないと、人は生き生きと暮らせない。閉塞感ある町に住む夢や希望のない人々たち。そんな問題を聞いたとき、僕は一気に町のイメージが暗くなった。なんだか寂しくて悲しくなった。
だけど、今回みんなと一緒に旅し、みんなのいろんな話を聞いていて思った。なんだ捨てたもんじゃないなって。
まだいける。自分から踏み出してくるような子たちには、夢や希望もちゃんと育まれている。
夢を聞かせてくれた松本君、小椋君、陣在君、谷田君、田中君、奥君たち、どうもありがとう。勇気が出たよ。
まだ見つからないという奥澤君や宇野君たち、大丈夫だよ。ちゃんと憧れをたどれば見えてくるから。
みんなみんなが夢を持ち、それぞれの場所に旅立ち、膨らませておいでよ。そしていつかまた必ず新温泉町で集結させよう。高森先生とともに、待ってるから。
合 掌
山地 弘純
最新記事 by 山地 弘純 (全て見る)
- 兵庫県新温泉町飲食店テイクアウト情報☆ エール飯にご協力を!! - 2020年4月20日
- うちは現在アナ雪ブーム真っ盛り - 2020年2月20日
- 仲間が琴浦町にある「東伯発電所」の壊れた風車の視察をしてきてくれました - 2020年2月19日