おばあちゃんが亡くなったおじいちゃんにむかってお線香を供えます。
「これは自分の分。これは長男の分。これは次男の分。これは長女の分。これは長男の上の子供の分。これは長男の下の子供の分。これは次男の一番上の子供の分。これは次男の二番目の子供の分。これは三番目の子供の分。これは長女の上の子供の分。これは長女の下の子供の分・・・」
いったい何本立てるんだろうと思いながら笑って見ていました。
線香はその香りに乗せて気持ちを届けるものです。
だから線香を何本立てるのかというと、気持ちの数だけ立てればいいと僕は思います。
よく線香は3本じゃないとダメだと注意する方がいますが、本当にそれがいいのでしょうか。
気持ちが入っていない形式的な3本より、おばあちゃんのように10本も11本も立てようとも気持ちを込めている方が、本来の意味に近いのだと思います。
線香は「たゆまぬ努力」を表します。
一気に燃えることはありません。少しづつ少しづつ燃えていく線香のように、私たちはゆっくりと少しづつでも歩みを止めることなく努力していかなければなりません。
一本だけ立てるのもいいでしょう。
私はご先祖様から引き継いだ命を無駄にしないように努力します。そんな思いを込めていただくのも素晴らしいことだと思います。
さて、今まで語ってきたことをふまえて、僕が檀家さん方から「副住職さん、線香は何本立てたらよいのですか?」
そう聞かれた時どう答えるかというと・・・
「線香は3本立てるのがいいですよ」
本当は何本でもいいのですが、と前置きした上でそう答えています。
3という数字には仏教において特別な意味があるそうです。
その3の意味を線香に込めていきます。
三世である過去、現在、未来をつながる命に感謝するために。
三密である身と口と心の修行の実践のために。
三宝である仏・法・僧に帰依するために。
三身である我身、仏身、衆生身が平等であることを感じるために。
三毒である貪・瞋・癡という欲望を燃やしつくすために
三学である戒・定・慧を正しく修行するために。
さまざまな意味あいを含む「3」という数字。
線香も3本立てるのが好ましいです。
「~するのがダメ」というのでなく、「~するほうがよい」というのが仏教の考え方ではないでしょうか。
山地 弘純
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