かわいらしい水子地蔵さんが、新たな仲間に加わった。
たくさんの水子地蔵さんたちを見ていると、これだけの人たちが同じ悲しみを共有してきたんだな~と感じた。
そんな方々がこの善住寺につどい、自分ひとりじゃないんだと思い、悲しみを乗り越え、大いなる安らぎを得られるよう、一心に祈りたいと思った。
お地蔵さまは優しい仏さまだ。
子供たちがこの世でもあの世でも健やかに過ごせるように、いつも見守って下さっている。
あの世の事はわからない。
しかし、どんな闇が待ち受けていようとも、お地蔵さまは光を差し延べて下さる。
お地蔵さまに向け、そして新しく水子地蔵を奉納した施主に向けて、「西院の河原の地蔵和讃」をお唱えした。
これはこの世の ことならず
死出の山路の 裾野なる
西院(さい)の河原の 物語
聞くにつけても 哀れなり
二つや三つや 四つ五つ
十にも足らぬ みどり子が
西院の河原に 集まりて
父上恋し 母恋し
恋し恋しと 泣く声は
この世の声とは こと変わり
悲しさ骨身を 通すなり
かのみどり子の 所作として
河原の石を とり集め
これにて廻向(えこう)の 塔を組む
一重組んでは 父のため
二重組んでは 母のため
三重組んでは 故郷(ふるさと)の
兄弟我が身と 廻向して
昼は一人で 遊べども
日も入り相いの その頃は
地獄の鬼が 現れて
やれ汝らは なにをする
娑婆(しゃば)に残りし 父母は
追善作善の 勤めなく
ただ明け暮れの 嘆きには
むごや悲しや 不憫やと
親の嘆きは 汝らが
苦患(くかん)を受くる 種となる
我を恨むる ことなかれ
黒鉄(くろがね)の棒を 差し延べて
積みたる塔を 押し崩す
その時能化の 地蔵尊
ゆるぎ出でさせ 給いつつ
汝ら命 短くて
冥土の旅に 来たるなり
娑婆と冥土は 程遠し
我を冥土の 父母と
思うて明け暮れ 頼めよと
幼きものを み衣の
裳(もすそ)のうちに かき入れて
哀れみ給うぞ ありがたき
未だ歩まぬ みどり子を
錫杖の柄に 取り付かせ
忍辱慈悲の み肌にぞ
いだき抱えて 撫でさすり
哀れみ給うぞ ありがたき
南無延命地蔵大菩薩
おん かかかびさんまえい そわか
これはこの世のことではありません。
死者が向かうあの世へとつづく山道の裾野にはこの世とあの世を分けるといわれる三途の川が流れています。
その果てしないほど大きな川の河原のことを、さいの河原と呼んでいます。
これはさいの河原の物語。
聞くたびにしみじみとした情愛が込み上げてきます。
2つや3つ、4つや5つ。
もっと小さな子もいるだろう。
もっと大きな子もいるだろう。
そんな10才にも足らないような幼子たちが、仏の国へ進むすべも知らず、さいの河原に取り残され、集まっています。
お父さ~ん。。。
お母さ~ん。。。
恋しい恋しいと泣く声は、この世で出していた声からは想像もできないくらい、悲しさが骨身を通すような声なのです。
しかし、お父さんもお母さんも、いくら呼んでも泣き叫んでも迎えにきてくれません。
その子たちは、お父さん、お母さんより早くに亡くなってしまったからです。
お父さんお母さん、先に死んでしまった不幸をお許し下さい。
お父さんお母さんに親孝行をすることができなかった幼子たちにできるたった一つのことは、河原にころがっている石を積むことくらい。
子供たちは石を積み重ねて、回向の塔をつくります。
1つ積んでは父のため。
2つ積んでは母のため。
3つ積んでは故郷の兄弟と我が身のため。
そう唱えながら、その思いが巡り巡って届くようにと、昼は一人で石を積んでいるのです。
しかし、日が暮れかかったころになると、恐ろしい地獄の鬼が現れます。
「やい、お前たちは何をしているんだ。
娑婆の世界に残っている父母は、お前のために善行を積んで届けることもせずに、ただ嘆くことばかりに明け暮れている。
むごいだの悲しいだの不憫だの言って嘆いているばかりでは、かえってお前たちの苦患の種になるのだ。
我を恨むなよ。すべては供養も何もしない親がわるいのだ。」
そう言いながら黒鉄の棒を振り回し、せっかく積み上げた回向の塔を崩してしまうのです。
子供たちは恐ろしくて、悲しくてたまりません。
その時、どこからか現れ、鬼の前に立ちはだかる方がおられます。
それがお地蔵さまです。能化といって、衆生を教化するために日々励まれている、私たちの強い味方なのです。
「お前たちは寿命が短く、親よりも先にこの死出の旅に出ることになったのだ。
あの世とこの世は全く別の世界であり、随分と遠い。もう戻ることもできない。
だからお前たち、私を冥土の親と思って、ずっと頼ったらいいんだよ。さ~来なさい。お前たちは今から私の子供だ」
そう言いながら、衣の裾の内側に抱き寄せ、しみじみとした情愛をかけられるそのお姿は、なんとありがたいことでしょう。
まだ歩くことができない乳飲み子を錫杖を頼りに取り付かせ、そして慈しみにあふれたその御胸に抱きかかえて、優しく撫でてさすり、しみじみとした情愛をかけられるそのお姿は、なんとありがたいことでしょう。
あ~ありがたい、命をつなぐお地蔵さまよ。
あなたに帰依し、心より感謝の祈りをささげます。
おん かかかびさんまえい そわか
山地 弘純
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