12月のある寒い日。
お葬式が二つ重なった。
一つは住職が。もう一つは僕が勤めることになった。
いつも思う。
住職じゃなく、僕で申し訳ないなって。。。
ずっと思い続けていること。
葬儀を事務的にこなすだけじゃなく、人々の悲しみを癒し、いいお別れだったと言ってもらえるようになりたい。
ただ、いくらいい衣を着ようとも、いくら大きな声を出そうとも、中身を隠すために張り合わせた薄いメッキが剥がれ落ちないか不安に思う。
導師を勤めるのもようやく十回を越えた。
でもまだ慣れることはない。
いや、慣れたくもないけれど。。。
今回は、涙涙のお葬式だった。
「やだ~。 やだ~!」
泣き叫ぶ高校生の女の子。
親から腕をもたれ、無理矢理釘を打たされたおじいちゃんの棺。
「やだよ~ おじいちゃんもう帰って来れなくなっちゃうもん!」
他の女の子の孫たちもオイオイ泣いている。
そんな彼女たちの姿は痛々しいが、それでいて温かいなとも思った。
おじいちゃんもこんなに愛されていることを感じることができて、きっと幸せだろうなとも。
それでも、なにか気の効いた言葉さえかけてあげられない僕は、ただぼ~っとその様子を眺めていた。
おばあちゃんも涙ながらに棺に抱きつき、声を絞り出した。
「わたしも連れて行って・・・」
その様子に僕はいたたまれなくなる。
そんなこと言わないで・・・
悲しくて悲しくてたまらない家族や親類の方々。
すすり泣く声が、部屋中に響き渡った。
72才という少し早い旅立ち。
心の準備をする時間がなかったとするならば、笑って見送ってあげてというのも酷な話だろう。
せめて僕にできる精一杯をと思い、いつもの式進行に加えて、御詠歌をお唱えした。
悲しい旋律が、より涙を助長したかもしれない。
それでも、その歌詞をみんなに届けたかった。
どうすれば、この人たちの悲しみを癒すことができるのだろう。
顔を上げて前に進む道を示すことができるのだろう。
やがて時が過ぎ、二七日(14日)に当る日に、忌明け法事を行った。
本来は七七日(49日)に行うこの法要ではあったが、早めにして欲しいとのことだった。
再び僕が法事を勤めさせていただくこととなった。
今、みんなどんな心境なんだろう。
この2週間で、少しは前向きになれたのだろうか。。。
人はいつか死ぬもので、早いか遅いかの差だけ。
そんなことを言い聞かせてみたって、到底受け入れることさえ出来ない。
時間が解決してくれる。
人は忘れることができるから。
でもそれだけでいいんだろうか?
忘れることで死から逃げているだけなんじゃないだろうか?
死を受け入れ前向きに生きるには・・・
僕はやっぱり、人は死んでも命は形を変えて生き続けている、見えなくなるだけなんだって話をした。
風になった命を感じるも、あの世にいった命と心を通わすも、あなたの心次第。
最高の見送り方は泣き笑い。
別れが寂しくて涙がこぼれるも、思い出を振り返りみんなで思わず顔を見合わせ笑ってしまう。
そんな忌みの期間であって欲しいと。。。
忌ってなにかけがらわしいものだなんておもっていないだろうか。
その意味を間違って捉えてはいないだろうか。
「私、今けがれてるから」
そんなセリフをよく耳にする。
死ってきたないもの?
死って毛嫌いされるもの?
大好きなあの人の死を、なんでそんな否定的に捉えるの?
あの人は汚れてなんかいない。
ひどいことを言わないでよ!!
だれもがそう思うだろう。
たしかに忌みを「けがれ」とも捉える。
だけど、「けがれ」っていうのは気が枯れること。
「気枯れ」って言うんだって。
「汚れ」じゃないんだよ。
誰もが死は辛い。
元気がなくなる。
自分の中の「気」が底をついてしまう。
その間は、悪い気が入りやすかったり、運気が悪くなったりしやすいから、なるべく慎まなければならない。
そういう意味なんだって僕は教わった。
そんな悲しみでざわめいた心を明るくするのが「忌明け」。
死の悲しみを乗り越え、死というものを受け入れ、しっかりと立ち上がる決意表明の日。
その漢字のままに読めばいい。
忌明けとは、己の心を明るくする日。
少し早いから、まだそんな決意ができないかな?
それでも忌明け法事を行ったからには、気をしっかりと持って元の生活に戻ってほしいなって思う。
そしてきっと、亡くなったおじいちゃんもそれを望んでいるはず。。。
死と再生を繰り返す命。
死が命を終わらせてしまうわけじゃない。消えてしまうわけでもない。
もうすでに死んだ瞬間から次へ動き出している。
宇宙の営みは、留まることを知らない。
ただ、動かしてやらないといけないのは、自分の心だけ。
止んでいた雪が、再び舞い始めた。
やっぱり冬はこうじゃないとな。。。
空を見上げながらしみじみつぶやいてみる。
繰り返す四季の風景。
その姿から、僕たちは無常を改めて感じるのだろう。
そして思う。
自分の心が、時の流れに取り残されないようにと。
山地 弘純
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