あれから、もう6年も経つのか。。。
ハチ、元気にしてるか。。。
僕のこと、覚えてるか。。。
2005年11月29日。
あの日、宝塚の中山寺において、真言宗の青年たちによって行われた研修会。
『魂(スピリチュアル)の現場から』というテーマが掲げられ、ヤンキー先生こと義家弘介先生による「学校」、夜回り先生こと水谷修先生による「街」、大下大圓僧正による「ベッドサイド」という、3つの注目すべき現場からのメッセージが発信された。
本当にどれも感動的なお話だった。
その中でも鮮明に残っている水谷先生のお話。
とにかくその迫力に圧倒された。。。
そう、誰もがよく知っている夜回り先生。
元夜間学校の教師であり、教師生活のほとんどを少年の非行、薬物問題に捧げ、「夜回り」と呼ばれる深夜パトロールを行いながら若者の更生に力を尽くしてこられた先生。
今は教師を辞め、日本各地の講演を通じて、少年少女の実態を広く社会に訴え続け、テレビなどでも何度も取り上げられている。
悲しいことに、先生は癌に侵されている。
本当ならもうとっくに尽きている命であり、当時でさえ医者から宣告された3年はもう過ぎているとのことだった。
それでも先生は生きていて、若者のために必死に頑張っておられた。
以前目にしたテレビのインタビューの受け答えが、僕は忘れられない。
「残り少ない命を削って、ここまで出来るのは何故ですか?」
「私は命を削っているんじゃない。もらっているんです。若者みんなから生きる力をもらってるんです。だから私は今も生きている。」
命を懸けている人しか言えない言葉だった。
ただ、思った。 すごい人だ。。。
そんな先生のお話が生で聞きたい。その思いが僕を研修会に向かわせた。
ズシン、ズシン。
静かな語り口ながら、熱く胸に響きわたる一句一語。
それは、先生が経験してきた、共に闘い続けた壮絶な子供たちの生き様を背負っているからだと知った。
「あい」という17才の少女のお話だった。
薬物に手を染めていた少女が先生と出会い、必死の治療によって薬物の魔の手から逃れ、なんとか明日に向かって歩き始めた。そんな矢先の出来事だった。
乱暴された過去が闇へと呼び戻す。
エイズ発症。
ほぼ10ヶ月の闘病生活の後、苦しみな中で死んでいった。それを最後まで見届けた先生の苦しみも悲しみも痛いほど伝わって、僕は胸が引き裂かれそうだった。
社会の裏側とも言われる夜の世界の話は、僕にはすごく重く、吐き気さえももよおすほどだった。
昼間の世界で明るい所を歩んでいる僕たちにとって、できることなら踏み込みたくない部分だったから。
こ、怖い。。。
お坊さんのくせにと言われようが、見て見ぬふりができるのならばしたいと思った。
そんなの都会の子のことだろ。
そんなの僕には関係ないだろ。
僕は目を伏せた。
あいちゃんは3ヶ月ほどの覚醒剤使用だったが、脳はボロボロに侵され、80才のおばあちゃんと同じくらいまで退化していたそうだ。
寂しさや苦しみ、もしくは興味本位からたった一度でも過ちを犯してしまうと、もう抜けることが出来なくなり、最悪の事態を引き起こしてしまう。
先生はそうやって何人もの死という悲しみに直面してきたと、言葉を詰まらせた。
「これが覚醒剤の恐ろしさなんだ。みんなにも知っておいてもらいたい。決してどこか遠くの問題ではないんだ。」
先生は語気を強めた。その顔は真っ赤だった。
僕に突き刺さりそうだった。「顔を上げろ!どこかで他人事って思ってないか?お前の周りにもいるんだぞ!」
そう直接言われているみたいな迫力があった。
「日が昇れば起き、日が沈めば眠る。これが自然なことであり、大切なことなんだ。夜の世界から、昼間の世界に戻りなさい。」
先生はそう子供たちに訴え続ける。今日も、明日も。。。
なのにそれでも彼らは、様々は誘惑溢れる夜の世界に憧れ、飛び出していく。家庭、学校など、そこには様々な要因もあるのだろう。薬物問題や暴力問題などの事件を引き起こす少年達も、本当はかわいくて、優しい心の持ち主なのだろうに。
なんでそっちに向かっちゃうんだよ。そう憂う気持ちとは相反する、僕自身もなんとなく感じていた憧れ。
先生は続けた。
イライラの取り巻く社会。行き着く先の子供たち。
親子の関係は「ハリネズミの関係」だ。
「ハリネズミの親子は、愛し合えば愛し合うほど傷つけ合ってしまう。現代の人間の発する言葉は、ハリネズミの親子のようなものだ。口を開くと喧嘩にしかならないというお宅は考えたほうがいいだろう。そのうち会話がなくなり、その苦しみや苛立ちを悪い方向へ向けてしまうかもしれないのだから。」
そんな先生の言葉は、自分にも思い当たった。はりねずみの親子のように傷つけあいそうになったことが。。。
大人たちはよく「今の子供たちは・・・」という言葉を使う。
しかしこれは自分たち大人の責任を丸投げした言葉だと先生は言った。
そして先生は叫んだ。
「お前らだけが悪いんじゃない。こんな今の社会が悪いんだ。」
やり場のない怒りが放たれる。
「大人の作った社会が変わらずに、ただ子供たちにのみ変わることを求めることは、非常に許しがたい責任転嫁なんだ!」
いったい僕に何ができるんだろう。
そんな子供たちに会ったとき、どう導いてやればいいんだろう。
なるべくなら出会わずにいたい。。。
(つづく)
山地 弘純
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