「ご飯だから早く帰ってきなさい」
「でも父さんまだお施餓鬼中やろ？」
「なに言ってるの。 父さん、もうテーブルについてるから」
え？
じゃあこのかすかに聞こえてくるお経の声は？
僕は一瞬きょとんとするが、すぐに理解できた。
あ、そうか。。。
そういうことか。。。
それは気のせいか、空耳か・・・
いや、違うな。
たった今、帰ってきたんだよね？
目を閉じて耳をすましてみる。
やっぱり・・・
確かに聞こえる。。。
お盆は、別れた大好きなあの人が帰ってくる。
それは、目に見えない素敵な魔法。
あの世からこの世に帰ってくるため許されたのはひと時の時間。
その魔法が解ける時まで、ただ時間の限り一緒に過ごして、心を満たしたいって誰もが願うんだ。
たとえ見えなくても、感じることができる。
あ～帰ってきてくれたんだなって。
積もる話があるなら、そっと語りかければいい。
こんなに近くで聞いていてくれるのは久しぶりなのだから。。。
七夕は彦星と織姫が一年に一度しか会えない日だけれど、
お盆は亡くなったあの人と、残された人たちとの一年に一度の再会の日。
なんてロマンティックなお話なのだろう。
もっとみんなそう感じてもいいのにな。。。
きゅうりの馬よ、あの人を乗せて飛ぶように走れ。
一刻も早く会いたいから。。。
あの人は今年が初盆。
そんなお宅は特に待ち遠しいだろう。
初誕生、初節句、初結婚記念日・・・。
今まで、いくつの初めてを記念に残してきたのだろう。
初めての思い出は、いつまでも瑞々しく記憶に残っているはず。。。
それと同じ。
「初盆」は初めてあの世からウチに戻って来た記念日。
特に盛大にお祝いしないとね。
もしかしたら、あの人にとって最後の「初めて」の記念日になるかもしれないから。
顔も知らない人たちもたくさん帰ってきている。
いったいいつのおじいちゃん？
何時代のおばあちゃん？
ひいひいひいひいひいひいひいおじいちゃん？
ひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいひいおばあちゃん？
今の自分があるのも、あなたたちのおかげです。
そう思いながら手を合わせ、感謝する。
お盆は、途切れることのない命を感じる時。
ず～っと、ず～っと過去をさかのぼって・・・
そして未来へと続いていく。
名残惜しいけど、魔法はとけてしまうんだ。
お別れが迫る。
茄子の牛よ、ゆっくりゆっくりと歩け。
振り返るあの人の顔を、少しでも長く見ていたいから。。。
「また来年帰ってくるから。
それに、あの世からいつも見守ってるよ」
そんなメッセージが聞こえる。
はかない夢の時間。
それがお盆の物語。
山地 弘純
最新記事 by 山地 弘純 (全て見る)
- 兵庫県新温泉町飲食店テイクアウト情報☆ エール飯にご協力を！！ - 2020年4月20日
- うちは現在アナ雪ブーム真っ盛り - 2020年2月20日
- 仲間が琴浦町にある「東伯発電所」の壊れた風車の視察をしてきてくれました - 2020年2月19日
