被災地に伝えたいこと。子供たちに伝えたいこと。自分に伝えたいこと。たくさんの想いを満たすために僕は子どもNGO懐の支援活動に参加した。
大根を一緒に切り、カニを一緒にさばき、ちくわを一緒に揚げ、一緒にお餅にきなこをまぶした。子供たちと一つのものを作ることに力を合わせた素晴らしき一体感と達成感。
一緒に「あったまってくださ~い」と明るい声を出しながらカニ汁を注ぎ、「お宅までお持ちしま~す」と言って子供たちと一緒に配達し、「お体に気をつけてくださいね」と仮設の皆さんの心に子供たちと一緒に寄りそう。そんな子供たちを通じた被災地の方々との触れ合い。すべてが僕にとってもかけがえのない経験となった。
特に印象的だった出来事がある。食料品などのお店を営んでいるおじいちゃんとの出会いだ。
「おじいちゃん、また戻ってきちゃいました。またちょっとお話聞かせてくれませんか?」
カニ汁を運んだ時に仮設住宅におけるストレスや、商売の赤字や行政への不満などを「ごめんね、愚痴ばっかりになっちゃって。」と言いながら聞かせてくれたおじいちゃん。もっと聞きたいと思いながらも一旦作業に戻った。
僕の役割はカニ汁を作ることなのか。いや違うな。不器用で話すとっかかりがつかめない子どもたちが、少しでも被災地のみなさんと繋がる手助けをすることだろ。いつしかそう思うようになっていた僕は、配達がほぼ終わりに近づいたころ高二の子を二人つれて、もう一度おじいちゃんのところに戻る。
今度はイスまで出してくれて、ゆっくりと話をして下さる。震災当日の様子だった。地震の時お店の冷蔵庫の引き出しが全部出てきて、お客さんが閉じ込められてしまったこと。なんとか車に乗って逃げだしたものの、津波に飲まれてしまったこと。「車って浮くんだね~。」としみじみ語るおじいちゃんに、僕たちはえ~っと驚きながら相鎚をうつ。
「海の方に流された車はみんなどうなったかわからないよ。おれは山の方に流されたから。」
ほんとに恐怖で思い出したくもないだろうことを、淡々と語って下さる。
「おじいちゃん、パワーあげるよ。」
最後にこなみさんとひろきくんが握手して、若いエネルギーを送る。僕はおじいちゃんの背中をさすってあげる。そしたらその瞬間に涙線がふっと緩んで・・・。突然泣き出しちゃったおじいちゃん。あ~、みんなきっと心に無理やり蓋をしてるんだろうなって、初めてその時実感した。
涙を流しながらもおじいちゃんは、努めて明るい声で言った。
「でもね、生きてればいいこともあるんだ。」
そういって携帯電話をこちらに向ける。待ち受け画面に貼られたかわいい赤ちゃんの姿。
「ひ孫ができたんだよ。」
目を真っ赤にしたおじいちゃんは笑ってた。ほんとに嬉しそうだった。僕はジーンときて鳥肌が立つ。
「おめでとうございます!」
僕たちは心の底から祝福の言葉をかけた。聞きたかった言葉だった。生きる希望。それを被災者であるおじいちゃんの口から聞けたということはとてつもなく嬉しい。
ありがとうおじいちゃん・・・。僕は、おじいちゃんとこなみさんとひろきくんの姿を、記念にパシャリとカメラに収めた。
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山地 弘純
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