導かれているのかな。御開帳を間近に控えて、今まで停滞していた様々な物事が、関を切ったように流れ始める。
今まで耳にタコができるほど親や檀信徒の方から言われていた結婚話。あまりにもプレッシャーになりすぎて、僕は言い続けた。「絶対に結婚なんかしない!」
それでも体がゆるやかな回復を見せ始めたころ、共に歩んで行きたいと思う女性に出会う。大阪に住む在家の子だった。
意を決して家族に紹介する。条件のいいお寺の子とのお見合いを何度か断り、一般在家の子を連れて来たので反対されるかもと思ったけれど、意外にも好意的に迎えてくれる。
そこからは想像以上のスピードで話が進んでいった。特に、格式が高く、結婚への最難関だと思われたおばあちゃんが、両親の背中を強く押してくれたことが大きい。これには驚いたし、とても嬉しかった。
あらかじめ彼女には伝えてあった。「お寺で家族と同居じゃないと結婚できないよ」と。そんな厳しい選択を受け入れ、しかも都会から田舎へと来てくれようという彼女には、とても深く感謝している。
僕たちは、ちょうど御開帳の半年前にあたる秋晴れの好日に、我が善住寺の本堂で仏前結婚式を挙げた。
キリスト教によるチャペル式、神道による神前式がスタンダードで、最近では人前式も増えているが、仏前式は意外と知られていない。やはり自分の信じる存在である御本尊様に、二人の誓いを見届けていただけたことは、なにより素敵なことだった。
式の中に指輪ではなく数珠交換がある。二人が仏様の教えを守り、お互いの心を一つにしていこうというものだ。そう、固めるのは僕たち二人だけのことではない。そこには全て御本尊様が介在しているのだ。
僕自身、チャペル式の方がかっこいいと思っていたし、彼女も純白のドレスに憧れていたけれど、実際仏前式をしてみて、その重みがひしひしと伝わってきた。
これって僕だけが味わうにはもったいない。誰かここで結婚式を挙げたいって思う人が出てくればいいのにな。そんなことも考えていた。
外を見ると、大勢の檀家さんがお祝いに駆けつけてくださっている。そんな方々の期待に目をそむけず、顔を真っ直ぐに上げて応える。
僕は自信がもてたのだと思う。なぜなら、今まで決められたレールの上を流されてきただけの僕にとって、人生の大きな選択を初めて自分で決めることができたのだから。
「これからは喜びは二倍に、悲しみは半分に分かち合い生きていきたい。」
誓いの言葉を捧げる先にはまだ見ぬ御本尊様。僕は彼女と共に、このお寺のために生きていく。
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山地 弘純
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