起床、朝の行法(約3時間)、朝勤行(おつとめ)、下座行(そうじ)、朝食、休憩、伽藍参拝、昼の行法(約3時間)、昼食、、休憩、夕の行法(約3時間)、夕勤行(おつとめ)、夕食、休憩、施餓鬼、就寝。
毎日同じことの繰り返し。だが、行法のレベルが上がっていくため、慣れることはない。
行法は本堂からではなく、奥の広い道場にて行う。
フロアには80名分の壇が、整然と並んでいる。僕達は一列で自分の場所へ向かった。
一人一人に檀と脇机とたたみ半畳が与えられている。
自分のたたみの前に立つ。座る前に108礼。
両膝を着き、両手を突き、頭を着く、「五体投地」という礼拝を108回行う。
これはもう完全にスクワットのトレーニングと同じだ。
寮監さんの「1!、2!、3!、4!、5!・・・」という掛け声に合わせて礼拝をする。
眠れてさえいれば、これくらいなんでもないのに・・・
今の僕にはどうしようもなくきつい。
肉体的にも、精神的にも・・・。
もし気持ちが折れれば、今までつなぎとめて来たもの全てが崩れてしまうだろう。
だけど、力の入らない体がささやきかける。
このまま倒れてしまおうか・・・。
その時、バタン!!とものすごい音がした。
誰かが倒れている。あわてて寮監さんが駆け寄る。
ゆうじゅん君だった。
風邪による発熱。きっとだいぶ前から無理してたんだろう。意識が飛んだんだろうか・・・
彼はそのまま部屋に運ばれた。
しかしリタイアしなかった。1座の遅れで止め、夜のみんなの休憩中、そして就寝時間になっても一人行法し、遅れを取り戻した。
僕は彼とはあまり話をしたことがなかったが、コウジュンとユウジュン、一文字違いの似たような名前の二人が同じように倒れることはできないな、などと妙な理由で頑張ろうと思った。
自分に気合を入れる。
「歯~くいしばれ~!!」
僕は礼拝で立つとき拳を握って、グーで立ち上がることにした。
何度も続けていくうち、皮膚がめくれ、血が滲む。
拳をわざと痛めつけていた。
苦しさを痛みで和らげようと血をたたみにこすりつけるように突いた。
もっと強く。もっと痛く。
リストカットしたり、タバコの火を自分の腕に押し付けたりする人の気持ちが少しわかるような気がした。
たたみ半畳に染み付いた血痕。
それが僕の勲章で、明日への原動力になっている。
(つづく)
山地 弘純
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