最近はお墓や仏壇をどう伝え、どう維持していくかが大きな問題となっている。
今年の都市部の棚行では、多くの家庭で今後の悩みを相談された。
ご先祖様を見ていた夫婦に子どもがなく、今後どうするか親戚兄弟みんなで悩んでいるお宅もあった。
うちのお寺とは遠く離れているが、お付き合いを続けていただいている。
60代くらいのご主人が言った。
「副住職、どうしましょう」
この言葉の意図が、永代供養に繋がるんだとは想像に易かった。
なんとかして続けることができないのだろうか。
なんとかしていのちの糸を切らずにいけないのだろうか。
一生懸命話し合ったが見つからず、ついには永代供養を探ることとなる。
「うちでも永代供養で全てをお預かりすることができます。
それとも、もしかしたら近所にすごくお安くで永代供養されると目星をつけているとこともあるかもしれませんね。
どうするのが一番いいのか、これから一緒に考えて行きましょう。
ただ、お宅の亡くなったおじいさんなどは、うちのおばあちゃんはよく知っています。ずっと昔からの付き合いがあります。
それにね、僕はこうやってTさんのところにお参りさせて仲良くなってきた今、どこかのTさんのことを全く知らないようなお寺さんに、Tさんの最期を見とらせたくない。
それなら 僕が見送りたい。そんな気持ちはあるんです。」
素直な気持ちだった。
思わずそんなことまで言ってしまっった。
うつむきがちだった僕がふっと顔を上げた時、ボロボロと涙がこぼれているTさんの姿が目に入ってきた。
一瞬の静寂の後に、絞り出すような言葉が・・・。
「その言葉が聞きたかったんや!」
そしてもう一度自分自身で確認するようにさらに小さくつぶやいた。
「その言葉が聞きたかったんや。」
「実は近所のお寺にもいろいろ聞いてますんや。でもやっぱり、そちらにお世話になりたいと今改めて思いました。」
それは僕の心にとても響いた。
安直に選びがちな永代供養に対しての不満を僕は抱いていた。
みんなそんなことでいいのかと。
しかしみんな心のどこかに凍らせた答えが、氷となって眠っているのではないか。
僕は確信した。
誠心誠意の言葉を。
とことん向き合う時間を。
そうすれば熱い思いが溶けて出てくるんだ。
善住寺の過去帳に記された大いなる家族の繋がりは、毎日の住職副住職の勤行によって、延々と輝きを与えられる。
これからも善住寺で、確かな光として祀りしていくだろう。
Tさんのお宅の全ても、お引き受けすることになった。
なかばあきらめ。
これが本望。
同じ永代供養でも、気持ちが全然違う。
耳を澄ませると、ご先祖様たちの声が聞こえてくるようだ。
「うん、その言葉が聞きたかったんや」
山地 弘純
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